シンプルに生きるメモ。

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訪問看護師ってどんな仕事?訪問看護初心者が感じたこと

こんにちは。

 

今回の記事は、「シンプルライフ」とはあまり関係のない内容になっています。

私が生業としている「看護」という仕事についてのお話ですので、興味のある方だけ読んでいただけたらと思います。

 

3月から職場が変わりました。訪問看護ステーションへの異動です。

訪問看護とは、利用者さんの生活している自宅や施設へ出向いて看護ケアや一部の医療処置・介護ケア・リハビリなどを行います。

また、利用者本人への身体的なケアだけでなく精神的なケア、家族のケアも重要な役割です。

 そんな訪問看護、これまで実習や研修で行った程度で、実際に働くのは今回が初めてです。

異動して3週間を終えての感想を述べたいと思います。

 

 

1.世の中にはいろんな人がいろんな環境で生活しているという当たり前の事実。そして看護をする場所が「家」であるということ。

当たり前すぎて笑われるかもしれませんが、本当に率直な感想はコレ。

これまで病院や施設でいろんな患者さん・利用者さん・家族と出会いましたが、それは病院や施設といった「ハコ」のなか。

医師・看護師・介護士・セラピストなどが常にいて、空調は管理され、物資も豊富にあり、緊急事はすぐに対応できる体制が整っている。何かあれば、近くにいる看護師や医師に相談し、指示を仰ぐことができる……という、ある意味守られた「ハコ」のなかでしか看護を提供したことがありませんでした。

でも、訪問看護では利用者や家族が実際に生活している「家」へ赴くことになります。

基本的に看護師一人で訪問するので、何かあれば即座に自分で判断する必要がある。(もちろん、判断に困ったときは携帯電話でステーションに連絡して、相談や応援を要請することは可能)

そして、病院のように物資が揃っているわけではないので、いろんな意味で制約があるのです。

また、その家その家ごとに「その家の個性」が滲み出ていて、当然ですが病院や施設などの環境とは全くの別物。昼間でも薄暗く、室温が快適とは言えないこともしばしば。

 療養者や家族は、病院や施設で出会う印象とはちょっぴり違う。

包み隠さず……とまではいかないにしても、ほぼ「素」の人物像がそこにはあるのです。

健康に何かしらの問題を抱えて自宅で療養生活を送る人、その人たちを支えている家族、老老介護高齢者の一人暮らし、認知症、貧困。

これでもかと現実を見せられます。

こんなリアルな場所で看護を提供できるなんて、なんてすごい所にきちゃったんだ!!という興奮。

不安もありますが、それ以上に「これから一生忘れることのない貴重な経験をさせてもらえる」という高揚感が優っている感じです。

 

 

2.訪問看護は生活そのものを支えるイメージ

病院ではどうしても「治療」が優先になるので、「◯◯という病気で手術を受けるために入院した△△さん。喫煙歴があるから、術後の肺炎に注意……」というイメージでした。そこに患者さんという「人」がいるのに、どこか「病気ありき」な感じです。

いっぽう、自宅療養者も何かしらの健康上の問題があって訪問看護を受けるわけですが、「団地で一人暮らし、猫とお花が好きな△△さんは◯◯という病気を患っている。毎日薬を飲む必要があるけれど、時々忘れてしまう。最近は家の中にこもりがちで買い物にも行けていないみたい」と、よりその人の人間像を描く必要が出てきます。

「看護」するということは同じはずなのに、その人をみる視点や看護を提供する上での思考・方法などがガラリと変わるのです。

その人が自分の城である「家」で健康的に快適に過ごせるように。できる限り不安を感じることなく穏やかに過ごせるように。

同居している家族がいるのであれば、その人たちの不安や不満、健康上の問題にも寄り添えるように。

こんなに「人」と「生活」に密接に関われる仕事、なかなかありません

 

 

3.これから訪問看護の需要は一層増える

訪問看護を始めてまだ3週間ですが、「これから訪問看護の需要はますます増えるだろうな」ということを実感しています。

入院期間は短縮され、一部の高度医療を除いて「病院から在宅へ」と積極的にシフトされていることは、世間のみなさんも感じていることでしょう。

たとえば、慢性疾患をたくさん抱える高齢者が健康を害して入院しても、治療がひと段落したら短期間で退院を余儀なくされ、あとは自宅療養となります。

これに不満を感じる人はとても多いようですが、やはり病院は生活の場ではなく治療の場。治療が終了した(もしくは積極的治療の適応ではない)と判断された時点で、帰るべきところへ帰るというのが自然なことだと思います。

でも、それがスムースにできないことが多い。病院にいるときは、「いくら治療が終わったからといって、こんな状態で家で生活できるだろうか。でも、退院してもらわないと……」と不安やジレンマを感じることもあったのですが、訪問看護の現場を知れば知るほど、「適切な介入があれば、どんな人でも自宅療養は可能」とまで考えれられるようになりました。

想像している以上に、訪問看護師っていろんなことをやるんですよ。

血圧や体温を測るだけじゃない。お風呂の介助もするし、床ずれの処置もするし、リハビリもする。自宅で採血するし、点滴もする。住みやすい環境をつくるためのお手伝いもします。

話し相手になって不安や悩みを聞いたり、家族や地域とのつなぎ役になったり、そこから他のサービスに繋いだり。本当にいろんなことをするんです。

もちろん、訪問看護師だけでできることには限界があるので、ケアマネージャーさんやヘルパーさんといった他職種の協力は必要不可欠です。

しかし、訪問看護師の判断や機転ひとつで療養者の生活の質を左右するといっても過言ではないくらい、家での生活に不安を感じたり他者の手助けを必要とする人にとっては重要な存在であると自負しています。

 

 

4.もっと訪問看護師の存在を知ってほしい

実際に訪問看護師のやることを知ってもらえれば、自宅療養への精神的なハードルは低くなると思います。

たった3週間しか働いていない私でさえ、世間一般の人たちが思っている以上に、「家にいながらいろんな治療・ケアを受けることは可能である」ということ、訪問看護師は、病気だけでなくありとあらゆることにアンテナを張って療養者を支えようと努力している」ことを痛感しています。

もっともっと、訪問看護師の存在と役割を知ってもらえたら、ずっと家で生活したいという人、やむなく病院や施設ではなく家での療養を選択する人たちが安心して家に帰ることができると思うのです。

 

 

つい長くなってしまいました。

実はついこの前まで「看護の仕事をいったん辞めて書く仕事に専念したい」という思いがあり、退職の話まで進んでいたのですが、いろんな巡り合わせで訪問看護の話をいただき挑戦することになったのです。

結果としては、看護の仕事を辞めなくて良かった。訪問看護をさせてもらえることになって良かった。

こんなに刺激的な仕事、なかなかありませんから。

 

読んでいただき、ありがとうございました。